JAMIT2016開催報告

第35回日本医用画像工学会大会を振り返って

大会長 羽石 秀昭

第35回日本医用画像工学会大会を2016年7月21日(木)~23日(土)の会期で,千葉大学西千葉キャンパスけやき会館にて開催しました.やや雨模様でしたが,ほどよい気温で過ごしやすい気候の中,行うことができました.参加者数および演題数は以下のようでした.

参加者数:総計362名(正会員:243名,非会員合計:60名,千葉大聴講生:43名,招待者・プレス関係他:16名.ここで「千葉大聴講生」とは千葉大学との共催により学生の無料聴講を認めたもの.千葉大生の発表者は有料での登録.)

演題数:総演題数133題(特別講演1題,チュートリアル3題,シンポジウム12題,一般演題/口演65題,一般演題/ポスター52題.)

参加者数,演題数とも例年の数を大きく上回り,盛会のうちに実施することができました.

一般演題のセッションでは口頭,ポスターいずれにおいても活発なディスカッションがなされました.大会奨励賞も例年通り設けましたが,全体の演題数が多かったことから,受賞件数も少し多めにして,11人の若手研究者に贈呈しました.受賞者のリストはJAMITのホームページで見ることができます.また,従来の大会では,一般演題の発表者のうち希望する人に,学会誌「Medical Imaging Technology」の大会特集号論文としての投稿を促してきました.今回はこれに加えて,シュプリンガー社から刊行されている国際論文誌International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery (IJCARS)のJAMIT特集号編集をめざして,それに対する希望も受け付けました.結果,多数の発表者がIJCAR誌への投稿を希望し,最終的にも十分な数の論文が投稿されたようです.一方でMIT誌大会特集号への投稿も例年並みとなっており,大会全体としてみると,より多くの研究成果を論文誌に投稿してもらうことに繋がりました.

各種企画も大変充実したものになりました.まずチュートリアル講演では機械学習関係として,本谷秀堅先生(名工大),庄野逸先生(電通大),鈴木賢治先生(イリノイ工科大)にご講演いただきました.その基礎や医用応用など,種々の切り口で講演いただき,よい勉強の機会となりました.広い会場がかなり埋まり,関心の高さを実感しました.

特別講演では病理医ご出身で産業技術総合研究所の池原譲先生から超1000nm近赤外波長域のイメージング技術についてご講演いただきました.産総研の先端技術を駆使した新しい医療イメージングは大変興味深いものでした.

シンポジウムを3つ開催しました.シンポジウム1では「IoT時代の医療・ヘルスケア」を取り上げ,野原康伸先生(九州大学病院),中嶋宏先生(オムロン),中村亨先生(東京大),西田佳史先生(産業技術総合研究所)にご講演いただきました.身近なセンサをインターネットに接続してビッグデータを生成していく事例などが紹介され,医療やヘルスケアでの新しい展開を考える契機になりました.

シンポジウム2で,文部科学省科研費新学術領域「レゾナンスバイオ」との共催とし,この領域から宮脇敦史先生(理研),曽我公平先生(東京理科大),根本知己先生(北大),横田秀夫先生(理研)にご講演いただきました.CTやMRIなどを扱う研究者・学生が多いJAMITにおいて,ミクロな生命現象を光で見る・操る技術は,非常に印象的であり,提示された各種の映像に感銘を受けた人も多かったのではないかと思います.

シンポジウム3では「スパースモデリング」を取り上げました.こちらも文部科学省の科研費新学術領域との共催とし,工藤博幸先生(筑波大),田中利幸先生(京都大),井上真郷先生(早稲田大),日野英逸先生(筑波大)にご講演いただきました.説明に時間を要する難解な分野でもありますが,どの演者もその本質を伝えようと熱心に講演してくださいました.時間もいくぶん超過しましたが,先生方の熱意の現れであり,あらためて感謝する次第です.

2日目夜は懇親会を行い,多数参加していただきました.研究者間の良い交流の場になったと思います.冒頭で千葉大学学長の徳久剛史先生にご挨拶いただきましたが,医学部出身の先生が,今後の画像診断の方向性としてディープラーニングに言及されるなど,よくトレンドを把握されていると感じました.ちなみにこの日は,世界でブレイクしたスマホアプリ「ポケモンGO」が日本ではじめて入手可能になった日で,千葉大学内のあちこちでスマホを手に立ち止まったり,うろうろしたりする学生が大発生しました.懇親会でもさっそく試している先生もおられました.

以上,行き届かない点も多々あったとは思いますが,全体的には概ね成功裡に終わったことにほっとしています.運営に関わった方,参加いただいた方,資金面で協力いただいた方など,すべての方にあらためて感謝いたします.